外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

外航船ではどんな生活を送っているのか? 外航船員の一日に密着!

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船というものは休みなく24時間、一年中動き続けています。

そんな船の中で働く船員のライフスタイルはどのような形になっているのでしょうか?

 

今回は、外航船員の船内生活についてピックアップしたいと思います。

 

 

船内生活

船内生活は機関士と航海士で大きく異なります

それぞれの生活について説明していきます。

 

船内生活(航海士編)

ワッチ体制

皆さんもご存知の通り、船は24時間動き続けているため船橋には常に人がいなければなりません。

そのため、航海士は基本的に交代制勤務(ワッチ体制)を行っています。


航海士は基本的には上図のような形でワッチ体制を組むことが多いです。

 

まだ経験の浅い三等航海士は周りに他の人もいて比較的操船のしやすい8-12の時間帯、

二等航海士は一人で勤務する必要のある0-4の時間帯、

一等航海士は日の出や日の入りが被り他船が見づらくなる4-8の時間帯を担当するようにワッチ体制を組んでいます。

 

航海士の一日

日本郵船の採用ページでは、二等航海士を例にとって、航海士の一日が分かりやすく説明されているので引用します。

(引用:海上での仕事 | 日本郵船 | 新卒採用情報

先程も説明した通り、二等航海士は0-4,12-16の間は船橋で航海当直に当たっています。

グラフからも分かる通り、勤務体制の都合上、まとめて長時間睡眠を取ることはできません。

 

また、当直業務以外は全てフリータイムかと言われると実際にはそうではありません。

⑦で説明されているように、船橋での見張り作業の他にも書類作業各種担当機器の点検などの仕事もこなさなくてはなりません。

そのため、どうしても当直業務以外の部分で残業が発生してしまいます。

 

正直に言ってしまうとグラフよりも当直以外の部分での業務量は多いです。

一か月の業務の中で一番暇な日でこれぐらいのスケジュールだと思った方がいいです。 

 

船内生活(機関士編)

M0運転

機関士は基本的には8-17時のDay timeが勤務時間という規則正しい生活を送っています。(船によって多少時間帯がずれる場合もあります)

 

何故、機関士の場合は当直業務を行わずに日勤を行うことができるかというと、多くの外航船では「M0(エムゼロ)運転」と呼ばれるシステムが採用されているからです。

M0とは「夜間は機関室を無人化し、万が一機器にトラブルが発生した場合にはアラームが鳴り当直機関士を起こす」というシステムです。

(M0:機関区域無人化 - Machinery space Zeroの略)

 

つまり逆に言うと、深夜でも何時でも、時間に関係なくアラームに叩き起こされます。

船内で立て続けに不具合が発生してしまうと1,2時間おきにアラームが鳴ってしまい、十分に睡眠がとれない場合もあります。

 

機関士の一日

では、先程と同様に引用を利用して機関士の一日を説明していきます。

機関士の業務

(引用:海上での仕事 | 日本郵船 | 新卒採用情報

 

機関士の場合には、1/E、2/E、3/Eで大きく勤務時間帯の変化はありません。

基本的には8-17時の勤務で、途中にお昼休憩を挟む形になります。

 

また、午前午後の業務でも途中休憩を挟みます。

この休憩時間は体力を回復するという意味もありますが、それまでの作業の進捗確認今後の作業の展望を相談するための重要な時間でもあります。

 

⑨で説明されていますが、当直の機関士は夜間に機関室の見回りを行います。

アラームが鳴る前の小さな異変がないか、機械では検出することのできない異常がないかを確認するための時間です。

 

さらに、このグラフには記載されていませんが、機関士は次の日の仕事の準備を行うことがとても大切です。

機関士の仕事は事前準備が7-8割で当日の作業は1-2割と表現されることもよくあります。

 

そのため、業務時間外の部分で次の日の予習に費やす時間があります。

初めて船に乗ったばかりの新人三等機関士や慣れない船に乗った人ほどこの負担が大きくなります。

 

入出港時の一日

ここまでで説明した航海士、機関士の一日はあくまでも通常航海中の話です。

入出港がある場合にはこれらの通常作業に加えて、入出港のスタンバイ作業や入港中の作業が追加されることになるため労働時間が増加します。

 

出入港が重なるとどうしても長時間労働になってしまうため、「労働基準法の違反ではないのか」と思う人もいるかもしれませんが、船員は労働基準法の適用外です。(その代わり船員法で労働について規定されています。)

 

そもそも船員は月に一回休日が取れるか取れないかぐらいで働いています。

 

陸上では過労死ラインは月の残業が80時間(一か月の労働日を20日としたとき)、つまり月の総労働時間が240時間程度だと過労死の危険があるとされているそうですが、外航船員の場合は月の総労働時間は300時間近くになります。

 

船内休暇

先程も少し話題に挙がりましたが、船内休暇は月に1,2回取れるか取れないかという形になっています。(船種や航路によって取りやすさが異なります。)

 

正直、休んだところで結局船の上なのでできることは少ないです。

普段しっかりと寝ることができないため船内休日はぐっすり寝たり、DVDなどを夜遅くまで見てみたり、なんらかの趣味に勤しむ人が多いです。

 

船内で楽しむことのできる娯楽等はまた別の機会で説明したいと思います。

 

 

 

以上が外航船員の一日についての説明でした。

船内では労働時間が長く過酷なのは間違いないですが、その分下船後には長期休暇を取得することができます。

人それぞれで向き不向きがあるとは思いますが、私の場合、長期休暇のことを考えれば船内の労働は対して辛いとは感じません。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!