外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

船員になるためには身体検査がある⁉視力・聴力・色覚・握力の合格基準とは

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飛行機のパイロットになるためには視力などを含めた身体検査に合格しなければならないという話を聞いたことがある人は多いと思います。

実は、船員も身体検査に合格する必要があります。

 

今回は、船員になるための身体適正基準について説明していきます。

 

 

身体検査および健康診断

身体検査

船員となるためには海技士という国家資格を取得する必要があります。

この資格を取得するためには筆記試験、口述試験、そして身体検査に合格する必要があります。

 

といっても、基本的に後で説明する身体適正基準を満たしていれば身体検査は問題ありません。

 

健康診断

身体検査に合格して海技士の資格を取得した後にも毎年検査があります

 

船員は毎年必ず健康診断を受ける必要があり、ここで身体適正基準を満たさなければ船に乗ることができないからです。

 

これについては以下のように船員法で定められています。

船員法第83条の規定により、船舶所有者は、国土交通大臣の指定する医師(指定医)が船内労働に適することを証明した健康証明書を持たない者を船舶に乗り組ませてはならないこととなっており、船員の方は、所定の健康検査(船員法施行規則第55条)を受け、当該検査の結果に基づき、国土交通大臣が指定する医師により健康検査合格標準表(船員法施行規則第2号表)に合格した旨の判定(検査を受けてから3ヶ月以内のものに限る。)を受けなければ、船員として就労することができません。

(引用:船員の健康証明書制度について - 国土交通省 

 

船員の身体適正基準

視力

視力に関する適正基準は以下のようになっています。

 

海技士(航海):各眼0.5以上 

海技士(機関):両目で0.4以上

 

航海士の方が機関士よりも適正基準が少し厳しくなっています。

矯正視力(眼鏡やコンタクトレンズをつけた状態)で適正基準を上回ればいいので、しっかり自分にあった眼鏡を用いればそこまで問題はないと思います。

 

色覚

色覚に問題がある場合には船員になることができません。

 

航海士の場合は、航海灯の色(緑、赤など)で船舶の進行方向を見分けなければなりません。

また、機関士も機関制御室で各機器の運転状況を瞬時に理解しオペレーションミスをなくすためには緑色、赤色のランプをしっかり識別する必要があります。 

 

日本人男性の20人に1人は色覚に問題があるという話を聞いたことがあります。(女性の場合はもっと割合が少ないらしいです)

 

船員として働くことを決めるまでは色覚ということに関してあまり意識したことはなかったので、自分の色覚が正常なのか異常なのかも分かりませんでした。

もしも船員になりたいと思っている人がいたら色覚の検査だけは試しに受けてみることをオススメします。

 

聴力

聴力に関しては、「両耳で5m以上の距離で会話をすることができる」というのが適正基準となっています。

少し曖昧な定義になっていますが、日常生活で困った経験がなければ問題はないと思います。

 

握力

握力の適正基準は

男性の場合:左右共に25kg以上

女性の場合:左右共に17kg以上

となっています。

 

船員は梯子(はしご)を利用して移動することも多く、最低限の握力は必要です。

 

持病

以下に該当する伝染病や疾患にかかっている人も船員になることはできません。

 

伝染病(エボラ出血熱、コレラ、黄熱、梅毒、新型インフルエンザ、…など)、

疾患(各種結核性疾患、新生物、糖尿病、心臓病、脳出血、脳梗塞、肺炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、肝硬変、慢性肝炎、じん臓炎、急性ひ尿生殖器疾患、てんかん、重症ぜんそくその他の疾患)

 

船内には一応病室もありますが、当然陸上と比べた場合には十分な処置を受けることはできないため、万が一の際に緊急を要する持病がある人は船員になることができないのです。

 

 

 


以上が船乗りになるための身体適正基準についての説明でした。

 

航空機のパイロットほど厳しい適正基準ではないため、厳しい体調管理を行う必要はありませんが、日々の健康のために規則正しい生活を意識して行動することは大切です。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!