外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

最強の資格⁉海技士免許(機関)を持っているとできること

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外航船に機関士として乗るためには海技士免許(機関)と呼ばれる国家資格を取得する必要があります。

 

船に乗るための資格ということは知っていても、実際にどんな仕事をすることができるのかは知らない人が多いと思います。

 

今回は海技士免許(機関)について説明していきたいと思います。

 

 

 

海技士免許とは

海技士免許の分類

船員として働くためには海技士免許を取得する必要があり、海技士免許の種類は

機関士として働くための海技士(機関)

航海士として働くための海技士(航海)

通信士として働くための海技士(電子通信)などがあります。

 

といっても現在外航商船に関して、無線部は存在せず、航海士が通信士の業務を兼任する形になっています。

 

今回はこの中でも海技士(機関)について注目して話を進めていきます。

 

海技士(機関)

海技士(機関)の資格は船舶の「航行する区域」「推進機関の出力」によって一~六級までの資格があります。

 

資格の取得には海技士国家試験を受ける必要があり、筆記試験、身体検査、口述試験全てに合格することで資格が得られます。

 

外航商船で機関士として働く場合には三級海技士が最低のラインとなります。

 

海技士(機関)を取得するとできること

船上での整備作業が何でもできる

機関士は、電気設備のメンテナンス、ボイラーのメンテナンス、冷凍機の取扱い、…など様々な業務を行います。

 

陸上の仕事で考えてみると、

電気設備のメンテナンスなどを行う場合には電気工事士

ボイラーの保守点検にはボイラー技士

冷凍機の取扱いには冷凍機械責任者など様々な資格を取得する必要があります。

 

しかし、船上で行う場合に限っては海技士免許さえ取得していれば全ての作業を行うことができます

つまり、海技士(機関)は整備全般を行うことのできる最強の資格といっても過言ではないかもしれません。

 

このことは実際にボイラー技士の受験資格などからも判断することができます。

 

ボイラー技士には二級→一級→特級という三つの段階があり、

最上位の資格である特級ボイラー技士の受験資格を手にするためには本来1級ボイラー技士の資格を所有している必要があります。

 

しかし、一級海技士(機関)を取得している場合には特級ボイラー技士の受験資格が認められます。(参考:受験資格(特級ボイラー技士)

 

また、一級海技士(機関)を持っている人はボイラー・タービン主任技術者の資格を取得することもできます。(参考:ボイラー・タービン主任技術者 (METI/経済産業省)

 

 

これらのことからも分かるように、機関士は整備作業なら何でもできるという人が多く、このことから一般的に転職にも強いと言われています。

 

もちろん、陸上で各種整備作業を行う場合には法律で定められた資格を取得する必要があるので注意が必要です。

 

小型船舶で世界一周ができる

ボートやクルーザーを操縦するための免許として小型船舶操縦士という免許があるのはご存知でしょうか?

 

この中でも1級小型船舶操縦士は最上位の資格であり、航行区域が無制限となります。

しかし、実は1級小型船舶操縦士免許を持っていても沿海区域から80海里以上、または海岸より100海里以上離れて航行する場合には、6級以上の機関海技士を同乗しなければなりません。

 

これは、長距離を航行する場合にはエンジンなどに不具合が発生する可能性が高まるため、緊急時に整備を行うことのできる機関士が必要となるからです。

 

つまり、本当の意味で世界中を自由に航行するためには海技士(機関)が必須となるのです。

 

 

 


以上が、海技士(機関)を持っているとできることについての説明でした。

 

同じエンジニアでも一つのものを極めるスペシャリストと幅広い知識を手にするゼネラリストが存在します。

「何でもできるっていうのはカッコいいな」と思ったことが、私が外航船の機関士になることを決めた一つの理由でもあります。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!