小笠原諸島の海底火山が噴火した影響で大量の軽石(かるいし)が漂着し、大問題となっていることがニュース等で話題になっています。
漁船などの小型船に影響が出ることは直観的に理解できますが、外航大型船にも何らかの影響があるのでしょうか?
今回は軽石が船舶に与える影響について説明していきたいと思います。
軽石とは
Wikipediaによると、
軽石(かるいし、pumice、パミス)とは、多孔質で密度の小さい火山砕屑物(火砕物)の一種。
であるという説明が記載されています。
軽石はスポンジのように中身がスカスカの多孔質であるため、文字通り軽い石であり、
海中に沈むことなく海面上を漂っています。
軽石が船舶に与える影響
軽石の影響で小型の漁船やフェリーなど様々な船舶が航行不能になっているという話が出ています。
何故、軽石が発生していると船を運行することができなくなるのでしょうか?
軽石が船体にぶつかることで傷ができるからといったような理由ではありません。
実はこれには船の冷却システムが関係しています。
船舶の主機冷却系統
以前別の記事でも紹介しましたが、船のエンジン(主機)や発電機、その他多くの補機の冷却には冷却海水(直接的に冷却しているのは清水の場合が多い)が使用されています。
さらに細かく説明していくと、
船体の底部に設けられている海水取り入れ口(Sea Chest)から海水を取り込み、
ポンプで加圧することで船内各所に冷却海水を供給しています。
このとき、ポンプの手前にはストレーナー(ゴミなどを取り除くためのフィルター)が設置されていて、ポンプにゴミなどが入り機器が損傷するのを防いでいます。
軽石が大量発生するとこのストレーナーが軽石で詰まってしまいます。
ストレーナーが詰まると何が起きるのか
ストレーナーに軽石やゴミ等が詰まると海水の流量が減少し、系統を冷却するのに十分な海水を供給することができなくなります。
そのため、エンジンやその他多くの機器がオーバーヒートして故障してしまいます。
また、ストレーナーが閉塞した状態でポンプを運転することはポンプが故障する原因にもなります。
つまり、軽石によって船舶が運航できなくなる理由は、船内の機器を冷却することができなくなるからという訳です!
大型外航船なら軽石が発生しても問題はない?
冒頭でも少し話題に挙げましたが、
軽石がプカプカ浮かんでいるぐらいなら大型外航船には影響がないんじゃないか
と考えていた人がもしかしたらいるかもしれません。
しかし、外航船もここまでで説明した冷却海水システムと同じ仕組みを利用して船内のエンジンや様々な機器の冷却を行っているため、
まったく同じ理由で航行不能に陥る危険性があります。
つまり、この軽石発生は漁業だけではなく日本の貿易全体に影響する大きな問題に発展する可能性もあるのです。
ストレーナー閉塞時の船内対応
ストレーナーが詰まってしまうと機器が冷却できなくなり、
オーバーヒートして故障するということを説明してきました。
勿論船内の機関士はこういったトラブルの際、何もせずに眺めているだけではありません。
基本的に冷却海水ポンプは2組備え付けられていて、
片方のポンプが使用不能になった場合にはもう片方のポンプを運転することで運航を維持できるようになっています。
そこで、ストレーナーが詰まってしまった場合にはスタンバイ機のポンプに運転機を切替、
その間に閉塞したストレーナーの中を掃除することでまた使用できる状態に復旧することができます。
万が一、大量の軽石が漂流して船の周りを覆ってしまうという状況になった場合には、
24時間交代制でひたすらストレーナーの掃除を繰り返すという作業を行うことになります……。
実は機関士のこういった地道な作業で船の運航が維持されているのです。
以上が、軽石が船舶に与える影響についての説明でした!
しばらくブログの更新が途絶えていましたが、
また少しずつ更新していきたいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました!