海外に行くと日本とは時間が異なり、時差が生じることがあるのは皆さんもご存知だと思います。
今回は、時差に関連して外航船の船内時間について説明していきたいと思います。
時差が生じる理由
時差は「国によって標準時が異なる」ことが原因で発生します。
以前、別の記事でも紹介しましたが、基本的に現在日常的に使用されている時刻というのは正午(12:00)に太陽が真上に来る時間となっています。
そのため、国によって時間が異なるという訳です。
「基本的に」という説明したのには、国によってはそういった地理的な条件を無視して標準時を設定している場合もあるからです。
例えば、タイと日本の時差は2時間ですが、タイとほぼ同じ経度に位置するシンガポールの日本との時差は1時間となっています。
経度差を考えると、本来シンガポールの時差も2時間とならなければおかしいのですが、シンガポールは経済面の理由からわざと標準時をずらして設定しています。
他にもロシアのように東西に長い国などでは現地時間と太陽の正中する時間にはズレがあります。
船内時間
船内時間の決め方
ここまでで説明したように、国によって標準時が異なるため、それに合わせて船内の時計も調整する必要があります。
もし時計がズレたまま海外に入港してしまうと「〇〇時から荷役開始」といった情報が何時のことを指しているのか分からなくなってしまうからです。
つまり、少なくとも次の港に到着するまでには船内時刻と現地時間を一致させなくてはなりません。
船内時間の変更方法
では、どのようなタイミングでどの程度船内時間を変更するのかというと、実は明確な決まりは存在しません。
乗った船の慣習や一緒に乗っている船長の判断などによって異なります。
しかし、一般的には多くの人が作業をしている日中の時間帯を避けて夜間(21時頃)に1時間程度の時刻改正(Time Correction)を行うことが多いです。
Time Correctionの方法は簡単で、船橋(Bridge)にあるMaster Clockと呼ばれる船全体の時間を制御している時計の設定値を変更するだけです。
Master Clockの時間を変更すると、船内の時計全てが自動でその時刻に変更されます。
このとき、時差に合わせるために船内時間を1時間戻したり(1hour aback)すると、反時計回りに勝手に動き出す時計を見かけることができます。
今では見慣れてしまいましたが、初めて見たときにはとても不思議な気持ちになりました。
西廻り航路は1日が25時間⁉
先程、「時差に合わせるために時間を戻す」という話をしましたが、船が西向きに走っている場合には時間を戻し、東向きに走っている場合には時間を進める必要があります。
つまり、「日本→ヨーロッパ→北米→日本」のように西廻りでずっと走り続ける航路をとる船に乗ると3日に一回ぐらいのペースで"1hour aback"が発生し、1日が25時間になります。
基本的にTime Correctionの行われる時間は三等航海士が当直に入っている時間帯が多いため、三等航海士は通常なら4時間で終わる当直を5時間続けなければいけません。
他の乗組員にとっては単純に休み時間が増えることになるため、とても嬉しいことです。(だんだん時差ボケで寝つきが悪くなってはしまいますが…)
日付変更線を通過時
小学校か中学校の地理の授業で日付変更線という話を受けたことがあると思います。
西廻り航路を続けていると1日25時間の日が積み重なっていき、最終的に普通の人よりも長い時間を生活することができると錯覚するかもしれません。
しかし、日付変更線を西向きに通過した場合には船内時間が一日進みます。
そのため、結局記録上は陸上で暮らす普通の人と同じ時間を過ごしていることになります。
あくまで記録上の話であり、船に乗っている当人の感覚としてはまったく影響のない話ですが…。
以上が外航船の船内時間についての話でした。
飛行機と違い船舶の場合は遠く離れた場所に行くまでに数週間という長い時間がかかるため、少しずつ時間を調整しています。
ここまで読んでいただきありがとうございました!