外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

清水圧力タンク、飲料水圧力タンクの役割とメンテナンス

通常船内には清水圧力タンク、飲料水圧力タンクといった圧力タンクが存在します。

今回はこれらの圧力タンクの役割とメンテナンス方法について説明していきたいと思います。

 

 

圧力タンク

SHINKO IND. LTD.

船内にある清水タンクおよび飲料水圧力タンクはそれぞれ

Fresh Water Hydrophore Tank(FW Hyd TK

Drink Water Hydrophore Tank (DW Hyd TK

と呼ばれます。

 

Hydという略し方で一般的なものは油圧を意味する”Hydraulic”ですが、

これらの圧力タンクに使われているHydは”Hydraulic”ではなく”Hydrophore”を意味します。

 

また、船の世界では”Tank”と表記するのにTとKが合わさったような文字で書く人も見かけます。

 

 

役割

Hyd TKの役割は、系統の圧力を保持することです。

 

基本的に圧力を生み出すのはポンプの役割です。

 

例えば、火災時の消火ホースからの放水のように継続的に水を使用する場合には

Hyd TKを使用しなくてもポンプのみで圧力を調整することはできます。

 

しかし、清水や飲料水は時間帯によって使用量が変化するため、

ポンプのみで系統の圧力を保持するにはポンプが細かく発停する必要があります。

 

短時間でポンプを発停し続けることはモーターに過大な始動電流を流し続けることになり、

モーター焼損などの原因となる可能性があります。

 

そこで、Hyd TKを系統に設置することでポンプの発停頻度が減らし、

モーターの焼損を防ぐことができます。

 

仕組み

Hyd tankの中には圧縮空気が封入されています。

 

水は非圧縮性流体なので自身が膨張収縮することで圧力をコントロールすることはできませんが、

空気は圧縮性流体のため、膨張収縮することで系統の圧力をコントロールすることができます。

 

船内の蛇口を開けて水を使用していくと清水系統の圧力が徐々に下がっていきますが、

FW Hyd TK内の圧縮空気が水を押し出す(膨張)ことによって圧力の減少が穏やかになるということです。

 

逆に清水ポンプで系統を加圧している場合には、

FW Hyd TK内の圧縮空気が圧力を吸収する(収縮)ことで圧力の変動を穏やかにしています。

 

つまり、Hyd TKを運用する上で圧縮空気の存在は非常に重要な要素になります。

 

メンテナンス

ここまでで述べたように、Hyd TKを正常に運用するためには適切な量の圧縮空気封入する必要があります。

 

レベルゲージの水位が高すぎる場合にはタンク内の圧縮空気量が少なく、

圧力の保持効果が少なくなってしまいます。

 

逆にレベルゲージの水位が低すぎる場合には

船体動揺などで液面が変動したときに清水系統に空気が混入してしまう(エア噛み)可能性があります。

 

そのため、見回りではレベルゲージを確認して水位が正常な範囲に保たれていることを確認することが大切です。

 

トラブルシューティング

FW pumpが短時間で発停を繰り返しているor 連続運転している

・圧縮空気量の不足(圧力保持効果の不足)

・Pressure Switchの不良

・清水の消費量が多い

・どこかで清水が漏れている

・FW pump自体の不調

 

清水使用時に空気混じりの水が排出される

・FW Hyd tankの水位不足

・FW Hyd tankに圧縮空気を供給するラインのバルブ(Normal Close)が漏れている

 

 

 


以上が、圧力タンクの役割とメンテナンス方法についての説明でした!

 

船に乗るとたまに圧力タンクのレベルゲージ上限を超えて水位が上昇しているのを見かけるときがあります。

他の機器のように動いているものではないので存在を軽視しがちですが、しっかりメンテナンスを行いましょう!

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!