居室(個室)は船乗りにとってプライバシーが保たれる数少ない貴重な場所です。
もちろん居室にはドアがついているのですが、
船舶の居室に使用されるドアにはしっかりと規格が存在します。
今回は居室ドアの構造について紹介していきたいと思います!
船舶の居室ドア
さて、こちらが一般的な外航船の居室ドアです。
“ACCOMMODATE ONE PERSON”は
一人用の居室であることを示しています。
わざとドアをフルオープンした状態で写真を撮っていますが、
ドアのヒンジ近くの部分に注目してください!
通常、ドアのヒンジ部分付近にはドアのタグが貼られているのですが、
タグには“FIRE RETARDING DOOR B-0 CLASS”という記載があります。
これは船の居室ドアにB0クラスの防火扉が使用されていることを意味しています。
防火扉
防火に関連する条約・法律
実は、外航船の居室に使うドアには防火扉を使用するということが国際条約のSOLAS条約(第 II−2 章)や船舶法の船舶防火構造規則で規定されています。
実際に、船舶防火構造規則の一部を引用すると次のように書かれています。
第二十七条の三 居住区域等には、火災の拡大を初期に防止する目的で、次の各号の方式のいずれかを採用しなければならない。
一 第一保護方式 居住区域等にA級仕切り、B級仕切り又はC級仕切りの隔壁を設ける方式
二 第二保護方式 居住区域等の火災の発生が予期されるすべての場所に自動スプリンクラ装置を備え付ける方式
三 第三保護方式 居住区域に五〇平方メートル(管海官庁が適当と認める公室については、管海官庁が適当と認める面積)を超えない床面積ごとにA級仕切り又はB級仕切りの隔壁を設け、かつ、居住区域等の火災の発生が予期されるすべての場所に火災探知装置を備え付ける方式
防火扉の規格
先程の引用文からも分かる通り、防火扉にはA級,B級,…などのCLASS分けが存在します。
A級仕切り
次に掲げる要件に適合する隔壁又は甲板で形成する仕切り
1.鋼又は鋼と同等の材料を用いたものであること
2.適当に補強されたものであること
3.不燃性材料で防熱が施されたものであること
4.60分の標準火災試験が終わるまで煙及び炎の通過を阻止することができるものであること
B級仕切り
次に掲げる要件に適合する隔壁、甲板、天井張り又は内張りで形成する仕切り
1.不燃性材料を用いたものであること
2.不燃性材料で防熱が施されたものであること
3.30分の標準火災試験が終わるまで炎の通過を阻止することができるものであること
つまり、A級の方がB級よりも長い間炎の通過を防ぐことができるということが分かります。
船上の火災は生死に繋がる大事故になり得るため、必ず阻止しなければなりません。
そのため、至る所に防火扉が使われているのは当然と言えます。
また、A CLASS, B CLASSも標準火災試験における防熱時間によって、さらに細かく規格が分類されています。
(防熱時間:炎にさらされない側の平均温度が試験開始時点から140℃を超えて上昇せず、かつ、継手を含むいかなる点においても試験開始時点から180℃(B級の場合225℃)を超えて上昇しない時間)
CLASS:防熱時間
A60:60分以上
A30:30分以上60分未満
A15:15分以上30分未満
A0:15分未満
B15:15分以上
B0:15分未満
よって、冒頭で載せた居室ドアのB0クラスとは、
「15分未満ある程度温度上昇を抑えて、30分間炎の通過を阻止できるドア」
という意味になります!
ここまで読んでくれた人の中には、
「船内のドアにどんな規格の防火扉が使われているから気になるから、全てのドアを開けてタグを確認しよう!」
という人がいるかもしれませんね。(いないです)
しかし、不審者として有名になるかもしれないのでオススメしません。
実は船の完成図書"FIRE CONTROL PLAN"を見るとどのドアにどんな規格のものが使われているかが全て描いてあります。
もしも船内の防火設備に興味を持った人がいればFIRE CONTROL PLANを見てみてください。
以上が船舶の居室ドアの説明でした!
もしも船内に使われているドアが襖(ふすま)のようなものだった場合、
一瞬で火災が燃え広がってしまうため、
炎の拡大を防ぐために様々なところに防火扉が使われています。
もしも船に乗る機会があればドアのヒンジ部分に注目してみてください笑
ここまで読んでいただきありがとうございました!