車に乗ったことのある人なら一度はガソリンスタンドでの給油を経験したことがあると思います。
もちろん船舶の場合も同様に、燃料を補給する必要があります。
今回は、巨大船の給油作業について説明していきたいと思います。
給油作業:バンカー
バンカーとは
船に補油する作業のことをバンカー(Bunker)と呼びます。
通常、バンカーは入港中に荷役作業と並行して行われています。
自動車の給油とは異なり大量の燃料を補油するため、長いときには12時間以上バンカー作業が行われることもあります。
バンカーの方法
船舶に燃料を供給する方法には陸側から供給する方法と海側から供給する方法の二種類があります。
陸側から供給
陸側から供給する場合にはタンクローリーなどで運んできた燃料をホースで繋ぎ移送します。
この方法は比較的小さな船舶に対して行われている方法で、大型外航船が燃料を補給する場合には次で説明する海側からの供給が使われています。
海側から供給
海側から供給する場合には、バンカーバージ(Bunker barge)と呼ばれる燃料を積んだ船が大型船に横付けし、船と船の間をホースで繋ぐことで燃料を供給します。
写真を見ると、アルファベットの”K”の下あたりからホースが船内に入っていることが分かると思います。
バンカーの量
乗る船の大きさや種類、航路に応じた燃料補油計画によって異なりますが、最大級の船だと一度の補油で8000トン以上の燃料を補給することもあります。
そのため、一度に大量の燃料を供給することのできる海側からの供給が行われているのです。
バンカーで注意するべきこと
油流出
バンカーをする上で最も気を付けないといけないことが、海洋への油流出です。
万が一油流出が発生してしまうと、海洋の生態系に影響を与え、また会社として経済的に大きな損失を被ることになります。
そこで、バンカーを行う際にはコーミングプラグ、スカッパープラグなどと呼ばれる栓で甲板上の排水口を塞ぎます。
こうすることで、もし油流出が発生しても甲板上に留まり、海洋汚染を防ぐことができます。
また、万が一の事態に備えSOPEP(Shipboard Oil Pollution Emergency Plan)で定められている油防除資材(SOPEP Material)を準備してバンカーを行います。(流出した油を吸着するマットなど)
正確な補油量
海洋汚染対策以外にも注意しなければならないことが、契約量の油がしっかりと供給されているかどうかを確認することです。
日本は信頼性が高いため、国内でバンカーをする際にはそれほど気にする必要はないのですが、海外の場合は不正を行い規定量の油を送ったように見せかけている場合もあります。
先程も説明しましたが、外航船の補油量は凄まじく、一度の補油作業の燃料代は数億円になることもあります。
そのため、わずか1%燃料の補油量が少なかったとしても大きな損失となります。
油の性状
通常、バンカーが無事終了してもその油をすぐに使用開始することはありません。
バンカーで補油した油はその場でサンプルを採り、分析機関に送り性状を確認してもらいます。
分析する性状は密度、硫黄分、粘度、熱量、流動点など様々な項目についてで、あまりにも劣悪な油であった場合にはバンカー会社にクレームを出し、交渉を行います。
油の性状についても、国内でバンカーする場合には非常に質の良い油が供給されるため安心ですが、海外では質の悪い油が供給されることがあるため注意が必要です。
以上が外航船の補油作業についての説明でした。
今回は燃料についてのみ説明したので海側からの供給についてピックアップしましたが、潤滑油(LO:Lubricate Oil)や飲料水などは陸側のタンクローリー等から供給されます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!