船員の公式な場での服装には肩章(けんしょう)や袖章(そでしょう)がついています。
そして役職によって肩章が異なります。
今回は肩章の秘密について説明していきたいと思います。
肩章の違い
肩章の金筋の数
(引用:株式会社アリマ-船員グッズ)
船員がつける肩章には引用画像で示した通りいくつか種類があり、金筋の数が異なります。
この金筋の数は船員の階級を表しています。
金筋4本は船長、3本が1等航海士、2本が2等航海士、1本が3等航海士を表しています。
つまり、階級が昇格するにつれて金筋が一本づつ増えていくことになります。
船内は階級社会になっているため、一目で役職の違いが分かるように区別されているのです。
また、肩章とは別に制服には袖章がついています。
袖章も肩章の場合と同様に金筋の数が船員の階級を表しています。
(以下の画像の場合は船長を意味する。)
(引用:ユニフォーム | 野間洋服店 )
肩章の形
また、先ほどの肩章の画像ではストライプの上部に丸いマークがついているものと菱形のマークがついているものの二種類あることが分かります。
基本的に船員は上部に丸いマークがついた肩章を使用している場合が多いです。
このマークは「波」を意味しているという話を聞いたことがありますが、具体的な文献は見つけることができなったのであくまでも噂話ぐらいで聞き流してください。
では、菱形のマークがついた肩章は誰が使用しているかをご存知でしょうか?
実は、日本郵船の船員は菱形のマークがついた肩章を使用しています。
三菱系の会社であるために菱形を利用しているという訳です。
海外の船社が利用している肩章の全てを把握している訳ではありませんが、少なくとも日本国内においては菱形マークの肩章や袖章を見たら日本郵船の船員だと判断しても問題ないと思います。
肩章の色
また、肩章で航海士か機関士かを判別することもできます。
上の画像でも示されている通り、航海士の場合には金のストライプのみ、機関士の場合は金のストライプの間に紫色のストライプが追加されています。
この他にも金色のストライプの間に、
白色のストライプが追加されたものは事務部
緑色のストライプが追加されたものは無線部
赤色のストライプが追加されたものは医務部
を意味しますが、外航商船ではこれらの役職の人は乗船していません。
豪華客船などに乗ればそういった人達を見かけることができるかもしれません。
何故機関士には紫色が追加されているのか
機関士の肩章に紫色のストライプが使用されている理由を調べると、たまに「紫色は油の色だから」という説明がされていることがありますが、これは間違いです。
そもそも紫色の油なんか見たことがありません。
機関士の肩章に紫色が使用されているのには歴史的な意味があります。
その歴史とは皆さんもご存知の「タイタニックの沈没事故」です。
タイタニックの映画を見たことがある人はイメージがつかみやすいと思いますが、あの時代の船舶には石炭が燃料として使用されていました。
そのため、船の主機を動かすため、発電機を駆動するためには人間の手で石炭を投入する必要がありました。
タイタニックが氷山に衝突、浸水が始まると船底付近にある機関室にはすぐに水が流れ込んできます。
船が沈没すると分かった時点でタイタニックの機関士達は甲板上に避難することもできましたが、ここで燃料の石炭を供給するのを止めたら船内電源が断たれ、船内の照明や無線機器も使用できなくなるため乗客が安全に避難できなくなります。
そのため、機関士達は沈没する最後の瞬間まで機関室に残り、船と運命を共にすることを選びました。
この行動に感銘を受けた当時のイギリス国王ジョージ5世は、イギリス王室のロイヤルカラーである紫色を機関士に使用する許可を出しました。
これが理由で機関士の肩章には今でも紫色が使用されていて、その色はロイヤルパープルを呼ばれています。
以上が船員がつける肩章についての説明でした。
私は元々紫色はそんなに好きな色ではなかったのですが、このエピソードを知り、機関士の持つロイヤルパープルに対するイメージが大きく変わりました。
ロイヤルパープルを背負う機関士の一人として、名に恥じない人間となれるように今後も精進していきたいです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!