現在、外航船の船員の多くは外国人で構成されています。
日本政府はこの状態を危惧して日本人外航船員を増やそうと努力しています。
今回は、何故そこまでして日本人外航船員を増やそうとしているのかを解説します。
日本人外航船員が減少した理由
別の記事で、外航船で働く人のほとんどが外国人であること、
そして日本政府は日本人外航船員を増やそうと努力していることを説明しました。
その記事の中でも簡単に日本人外航船員数の推移を紹介しましたが、以前は日本人外航船員も多く存在しました。
では、何故現在は多くの外航船船員は外国人船員に取って代わられてしまったのでしょうか?
(引用:3 海事産業の動向と施策)
これは、外航海運分野における国際競争の激化やプラザ合意による大幅な円高等の影響により海運業界が不況に陥り、賃金の高い日本人外航船員から給料の安い外国人外航船員に需要が変化していったことが大きな要因です。
外国人船員だけでは何か問題なのか
現状、外航船の多くが外国人で構成されているのは冒頭でも説明した通りです。
では、コスト面から給料の安い外国人外航船員を利用していることで何か問題があるのでしょうか?
実はここには大きな問題があります。
決して「外国人は不真面目で、日本人は真面目だから」というようなまったく論理性のない理由ではありません。
外国人の中にも真面目な人もいれば、日本人の中にも不真面目な人はいます。
国籍ではなく個人個人で考えなければなりません。
では、外国人外航船員を多く雇用することの何が問題なんでしょうか。
それは「外国人外航船員だけでは安定的な海上輸送を確保することができない」からです。
日本人外航船員を雇用する理由
安定的な海上輸送が確保できないとはどういうことなのでしょうか?
実は災害など非常時には外国船社は安全性や経済性を重視して海上輸送を停止するケースがあります。
実際に2011年の東日本大震災発生時には、原発事故による放射線汚染への懸念から、発災後2か月間で41隻の外国船社の運航するコンテナ船が京浜港への寄港をキャンセルするという事態が発生しました。
また、2019年7月にはホムルズ海峡においてイランがイギリス船籍の船を拿捕(だほ)するという事件が発生し、イギリス政府はイギリス船籍の船全てにホムルズ海峡の航行を避けるように指示しました。
このように、旗国(船籍として登録している国)の管轄権を行使された場合、船舶はその命令に従う他ありません。
つまり、災害時や有事の際に、安定的な海上輸送を維持するためには、日本人外航船員の乗る日本籍船が必要不可欠となるのです。
それにも関わらず、外航日本人船員が非常に少ないというのは既に説明した通りです。
ここまで外国人外航船員だけではダメという話をさせていただきましたが、勘違いしてほしくないのは外国人だけではダメなのであって、外国人と共に働くというのは大賛成であり、また外国人船員は非常に優秀な人も多いという点です。
日本の大手海運会社の中には、フィリピンなどに船員の教育機関を作り、船員の教育を行っている所もあります。
そのおかげなのか昔から船の世界を知っている人に話を聞くと、外国人船員のレベルは確実に上昇していると聞きます。
そして私自身、外国人と一緒に仕事をすることはとても楽しいと感じています。
日本人だけだと退屈してしまうかもしれない長い乗船期間を楽しく生活できているのは彼らのおかげでもあります。
今後は日本人外航船員の数が増え、より良い環境となることを願っています。
以上が日本人外航船員を雇用する理由でした!
ここまで読んでいただきありがとうございました!