外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

船の扉は危険!船上生活をする上で重要なドアの扱い方

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船上でよくある怪我として、Finger injuryがあります。

これは重い物で指を挟んだり、ドアに指を挟まれるなどして発生する怪我です。

 

特にドアに関連する怪我は外航商船に限らず、クルーズ船や漁船など全ての船において発生する危険があり、船に乗る人は全員気を付けなければなりません。

 

今回は、Finger Injuryを防ぐために船上でのドアの開閉方法について説明していきたいと思います。

 

 

船上の環境とFinger Injury

船の上ではドアに指を挟まれることによる怪我がよく発生しています。

そもそも船上では船の揺れ、強風、室内外の気圧差などによりドアが意図せず勢いよく閉まることがあります。

そのため、陸上生活以上にドアが危険なものであると認識することが大切です。

 

船の揺れ

皆さんもご存知の通り、船は海に浮かんでいるため基本的に揺れがあります。

荒天時には揺れが激しくなり、ドアが勝手に開閉してしまうことがあります。

 

そのため、特に船の揺れが激しい場合にはドアの開閉に注意する必要があります。

 

強風

船は大海原を航行しています。

周りに山やビルなど風を遮るものが存在しないため。基本的に海の上は常に強風が吹いています。

 

暴露甲板に繋がるドア(外に出ることのできるドア)は風の影響を受けやすいです。

特に風上側のドアの場合には風の影響で勢いよくドアが閉まるため注意が必要です。

 

室内外の気圧差

基本的に船内のドアは気密性が高いものが多く、船内の空気の吸気排気は空調機器でコントロールされています。

そのため、室内外で気圧差が生じている場合が多く、ドアを開閉する際、急に開いたり急に閉まったりするという現象が発生します。

 

 

船上では上で説明した要因が重なることで非常に強い力で扉が閉まります。

指を挟んでしまった場合には、最悪の場合指切断という大事故になることもあります。

 

船上における正しい扉の開閉方法

ここまでで説明した通り、船上においてドアは危険なものではありますが、正しい方法で扉の開閉を行えば怪我をすることはありません

そこで、船上における正しい扉の開閉方法について紹介します。

 

ドアの縁に手をかけない

ドアの縁に手をかけてしまうと不意に扉が閉まったときに怪我してしまいます。

そのため、ドアを掴むときには必ずドアハンドルを掴むようにします。

 

あまり船に乗ったことのない人はドアに対する危険意識が少なく、無意識でドアの縁に手をかけて行動してしまう場合があるので、船上では「ハンドルを掴む」ことを常に意識して行動することが大切です。

 

風下側の扉を利用する

先程も説明しましたが、風上側は風の影響が強く扉の開閉を行うのは危険です。

そのため、可能な限り風下側(Lee side:リーサイド)の扉を利用するようにします。

 

扉の開閉に限らず、海中転落などを防ぐため船上ではリーサイドで移動することが基本となっています。

 

ドアを開けておく場合にはドアフックを利用する

ドアが開きっぱなしになっているとドアの縁に手をかけて通過するという行動をしがちです。

このとき意図せずドアが閉まってしまうと怪我が発生してしまいます。

 

そこで、ドアを開けておく場合には必ずドアフックを利用するようにします。

ドアフックをかけておけば不意にドアが閉まるということはなくなるので安全に通過することができます。

 

おまけ:ドアについているパイプは何のためにあるのか

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商船に乗っていると、暴露甲板へ繋がるドア付近に謎のパイプが設置してある場合があります。

皆さんはこのパイプは何のために使用するのかご存知ですか?

 

 

 

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実はこのパイプはドアをロックしているレバーが固い場合の補助として利用します。

テコの原理を使うことで楽にレバーを開けることができるという訳です。

といっても、しっかりレバーのグリースアップやナットを締めつけ調整を行えば容易に開閉できるようになるため、あくまでも緊急時に開閉する場合の手段ということになります。

 

 

 


以上が船上でのドアの開閉方法についての説明でした。

 

クルーズ船に乗る人、船乗りになったばかりの人など、また船上生活に慣れていない人はドアに関する怪我に特に注意して行動してください。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!