皆さんは船首のアンカー付近から水を垂れ流しながら入港している船を見かけたことはありますか?
今回は、アンカーから流れ出ている水の役割について説明していきたいと思います。
アンカーから流れ出る水
入港している船に注目してみると、写真のようにアンカー付近から水が流れ出ている船を見かけることがあるかもしれません。
アンカーについての詳しい説明は別の記事で紹介したので、まだ読んでいない人は読んでみてください。
さて、少し話が逸れましたが、この水の正体は海水です。
そして、この海水はアンカーウォッシュのために使用されています。
アンカーウォッシュ
アンカーウォッシュとは、その名の通りアンカーを洗うことです。
アンカーや錨鎖(アンカーチェーン)は使用中、海底の泥や砂を掻くことで船をその場に留める力を生み出しています。
そのため、アンカーを巻き上げる際にはアンカーチェーンに大量の泥や砂が付着します。
この泥や砂をしっかり洗い流してからアンカーを片付けないと、砂や泥が固まることで鎖の動きが悪くなったり、船上が汚れるなどの悪影響があります。
そこで、大量の海水を垂れ流しながらアンカーを巻き上げることでアンカーウォッシュを行っているのです。
アンカーウォッシュの水が排出されている船とされていない船
もちろん全ての船がアンカーウォッシュの水を排出しながら入港している訳ではありません。
その理由は、アンカーを利用して錨泊していた船だけがアンカーウオッシュを行う必要があるからです。
船は入港時間に遅れるわけにはいかないので、早めに入港予定の港付近に到着してアンカーを降ろし、沖待ちをしていることがあります。
この場合、入港直前に錨を上げることになります。
そのため、入港中にアンカーウォッシュを行っている船は、近くで沖待ちしていた船ということが分かります。
一方で、沖待ちをする必要がなく遠くから走ってきてそのまま入港する船の場合は当然アンカーウォッシュを行う必要はありません。
アンカーウォッシュの特殊な使い道
実はアンカーウォッシュはアンカーを洗う以外の目的でも使用する場合があります。
それは、海水系統の圧力調整を行うためです。
突然こんなことを言われても良く分からないと思うので詳しく解説していこうと思います。
アンカーウォッシュの配管
通常、アンカーウォッシュの海水が流れる配管はデッキ上の消火ホース用の配管と同じラインが使用されています。
船の上で操練(消火訓練)を行う際には、ポンプを起動して消火栓まで海水を送るのですが、海水の圧力が強すぎると消火ホースに穴が開いたり何らかの不具合が発生してしまう可能性があります。
そこで、予めアンカーウォッシュのラインを開けておき、海水の圧力の逃がしを作った状態でポンプを起動します。
こうすることでポンプ起動時に過大な圧力がかかり消火ホースが破損するのを防ぐことができるのです。
小学校等で一度に大量の蛇口を開けると水が弱くなるのと同じイメージです。(この例えでちゃんと伝わるかは分かりませんが…)
といっても、消火栓を使用する際には必ずアンカーウォッシュのラインを開ける必要がある訳ではないので、あくまでも特殊な運用方法ではあります。
以上がアンカーウォッシュの説明でした。
なかなか普通の人は船がアンカーウォッシュを行っている姿を見ることはできないと思いますが、運良く錨を上げて出発する瞬間の船を見かけたら船首付近に注目してみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました!