船の錨のマークは信頼・希望の象徴としてアクセサリー等、世界中様々な所で使われています。
一方で、実際の錨がどのような形をしているか皆さんは実際に見たことはありますか?
今回は、船の錨がどのような形をしているのかについて説明していきたいと思います。
信頼・希望の示すシンボルマーク:アンカー
皆さんはアンカーの簡単な絵を描いてくださいと言われたらどのような絵を描きますか?
おそらく多くの人が下図のような絵を描くと思います。
このマークはアンカーマーク、アンカーシンボル(Anchor symbol)等と呼ばれ、日本に限らず世界中で使用されています。
アクセサリーとしてネックレスやピアスなどのデザインに使われているのを見たことがある人も多いと思います。
実はこのマークは実際のアンカーをデフォルメしたデザインで、実際のアンカーはこれとは少し違った形をしています。
実際のアンカーの形
実際に船で使用されているアンカーの形について紹介していく前に、アンカーの種類について簡単な説明をしておきます。
アンカーは大きく分けるとストックアンカーとストックレスアンカーの二種類に分類することができます。
昔はストックアンカーが主流でしたが、現在はほぼ全ての大型船でストックレスアンカーが使用されています。
ストックアンカー:Stock Anchor
How Anchors Hold a Recreational Boat in Place? - Boating Buddy
ストックアンカーは名前の通り、ストックと呼ばれる部分を持っているアンカーです。
ストックアンカーの構造
ストックアンカーでは、上図のようにストックとアンカーの爪が直交する形になっています。
アンカーマークで錨の上部に書かれている横線はこのストックを表しているのですが、実際は直交しているストックを同じ平面上にあるかのようにデフォルメしているという訳です。
ストックの役割
ところで、このストックは何のために存在するのでしょうか?
実はストックにはアンカーの爪が海底に突き刺さるようにアンカーの向きを調整する役割があります。
錨がしっかりと作用するためには爪が海底に突き刺さる必要があります。
ストックアンカーの場合、万が一錨を降ろした際に爪が海底と平行になってしまったとしても直交するストックが立ち上がった状態となります。(写真と同じ状態)
そのため、チェーンで錨の上部を引いたときにストックの抵抗で錨が回転し、爪が海底に突き刺さる状態に変わります。
このようにストックアンカーはどんなときでもアンカーの爪が海底に突き刺さるということで長年使用されてきました。
ストックアンカーの欠点
しかし、ストックアンカーはその構造上、収納するのに不便であるという欠点があります。
ストックが折りたたみ式になっていて収納する際の無駄なスペースを減らすことができるタイプのストックアンカーも存在しますが、その場合にもアンカーの使用前後でストックを操作しなければいけないという手間がかかります。
これらの欠点を解決するために生まれたのがストックレスアンカーです。
ストックレスアンカー
Stockless Baldt Anchor | Marine Stockless Anchor Supplier | Pilotfits
ストックレスアンカーは名前の通りストックをもたないアンカーのことを指します。
ストックレスアンカーの構造
ストックレスアンカーでは、シャンクと呼ばれる中心にある柄の部分と爪と一体になったアンカーヘッドの部分がピンによって接合されています。
そして、アンカーヘッドとシャンクの固定部分は40度程度正面又は裏面に自由に動くようになっています。
このため、どちらの面で着地してもアンカーヘッドについている爪が海底に食い込むような仕組みとなっています。
ストックレスアンカーの利点欠点
ストックレスアンカーはストックアンカーと比べて収納性に優れ、アンカーの使用前後でストックの出し入れなどもする必要がないため利便性にも優れています。
そのため、現在はほぼ全ての大型船でストックレスアンカーが使われるようになりました。
ストックレスアンカーが誕生した当初は、
アンカーの爪が上手く海底に掛からない。
アンカーが少し動いたときに回転し、地中に掛かっていた爪が外れてしまう
などの問題点があり、安全性を疑問視する声も多数存在しました。
現在はアンカーの改良が進み、信頼性の高いストックレスアンカーが使われています。
以上がアンカーの形についての説明でした。
私は船乗りになるために船についての勉強を始めるまでは、船の錨はアンカーマークと同じように平面的な形をしていると思っていました。
もしかしたら私と同じように錨の形を誤解している人がいるのではないかと思い、記事を書いてみました。
ここまで読んでいただきありがとうございました!