外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

船からは水が絶えず排出されている? 船から排出される水の正体と役割

船の積荷が少なくなると喫水の上がり、船の船底付近が見えるようになります。

皆さんは船底付近から絶えず垂れ流しになっている水を見たことはありますか?

 

今回は、船から絶えず排出されている水の正体について説明していきたいと思います。

 

 

喫水の上がった船から排出されている水

バンカー

外航船から水が排出されている様子を捉えた良い写真を持っていなかったので、先日別の記事で説明したバンカーバージを具体例として使用します。

バンカーバージは積んでいた燃料を大型船に供給すると軽くなり、喫水が上がるため写真で示したように船の船底部分が見えるようになります。

 

写真の中央右側に注目すると船から水が排出されているのが分かると思います。

船側の色が変わっていることからも分かるようにこの部分は普段海水面よりも下にあるため、あまり目立ちませんが、船が動いているときは常にこの部分から水が排出されています。

 

謎の水の正体

この水の正体は一体何でしょうか?

船内で使用した生活排水、甲板上に溜まった水など様々な可能性が考えられると思います。

 

もしも短い時間だけチョロチョロと排出されているのであればそういった可能性もあり得ますが、絶えず排出されているため違うものだと考えられます。

 

 

実はこの水の正体は冷却海水です。

 

排出される水の役割

船内にあるエンジンや発電機などの様々な機器は、運転するときに熱を発するため冷却する必要があります。

通常、これらの機器を直接的に冷却するのには冷却清水(自動車ではクーラント)が使われています。

 

しかし、冷却清水も熱を受け取って加熱されていくため、冷却清水自体を冷却する必要があります。

そこで冷却海水が使用されています。

冷却海水

つまり、エンジンの熱を冷却清水で奪い、その熱をさらに冷却海水で奪うことで系統全体を冷却している訳です。

 

船のシステムによっては海水を使って直接機器の冷却を行っている場合もあります。

しかし、海水を直接つかうと配管の腐食や不純物の析出などの問題が発生してしまうため、冷却清水を用いるシステムが主流となっています。(このシステムをCCS:Central cooling systemと呼びます)

 

大型船に限らず、小型のボートや水上バイクのようなものも冷却海水を利用しているため、よく見ると海水が排出されているのが分かるかもしれません。(通常は水面下で排出されているので分かりづらいですが…)

 

 

 


以上が船から排出されている冷却海水についての説明でした。

 

海水の温度が変化すると船内の機器を冷却する能力も大きく変化するため、航行する海域によって機器の運転状態は変化します。

また、設計の段階で海水温度が何℃までなら主機を100%使用できるか等も決められています。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!