外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

船内ではトランシーバー必須⁉ 外航船員の特殊な労働環境とは?

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外航船員は船の中でどのような環境で仕事をしているかご存知でしょうか?

 

今回は外航船員の労働環境について説明していきたいと思います。

 

外航船内の仕事場

船内で働く場所はその環境によっていくつかに分類することができます。

もっと細かく分類することも可能ですが、今回は大きく4つの区域(船橋・甲板上・機関制御室・機関室)に分けてそれぞれの労働環境について説明していきます。

 

船橋(せんきょう:Bridge)

Bridgeは主に航海士が働いている場所です。

船は24時間休まず動きつづけているので、交代制で勤務を行い、Brideには常に誰か人がいる状態になっています。

遠くまで見渡すことができるように船の中でも一番高い場所にあり、Bridgeからの景色は船乗りの醍醐味といってもいいかもしれません。

 

Bridgeの仕事環境は快適となるように空調でコントロールされていますが、船の頂部に存在するため太陽光の影響を受けやすく、意識して空調の微調整する必要があります。

適温で騒音がないといった意味では快適かもしれませんが、高い所に位置し船の揺れの影響が大きくでてしまうため、船酔いしやすい場所でもあります。

荒天時には非常に過酷な仕事場と言えるかもしれません。

 

甲板上(On-Deck)

オンデッキはもちろん天候の影響を大きく受けます。

船は大海原を航行していることもあり、基本的にオンデッキには常に強風が吹いています。

 

オンデッキでの作業は一歩間違えると船外に放り出されてしまう危険もあります。

気象海象(かいしょう)に注意し作業を選択、延期する必要があります。

 

ロシア沿岸などの寒冷地では気温が-20℃まで下がることもあります。

潮風や太陽光などで機器が劣化しやすく、日頃のメンテナンスがかかせません。

 

機関制御室(ECR: Engine Control Room)

機関制御室 ECR

(引用:Joy of Discovery: Maersk Peary

機関制御室はECRと呼びます。

ECRには船内の様々な機器を監視操作するための操作端末や電源が設置されています。

各種機器のコンピュータがオーバーヒートしないようにECR内の温度は空調で快適な状態に管理してあります。

しかし、基本的には機関室と隣接していることが多く、エンジンの振動や騒音などはECR内でも感じられます。(優秀な機関士となるためには、むしろそれらの振動や騒音の小さな変化に気づけるようになる必要があります)

 

機関室(Engine room)

機関室

私を含めた機関士のメインの仕事場です。

機関室内は騒音・振動・高温という過酷な環境になっています。

 

基本的に機関室内の気温は40℃程度あり、ペルシャ湾と呼ばれる非常に暑い地域に行く場合には50℃近くまで温度が上昇することもあります。

 

また、騒音に関してはうるさすぎて耳が悪くなってしまうので、機関室内では常に耳栓を着用しています。

 

外航船員の働き方

トランシーバーの利用

このような環境で普段働いているのですが、仕事中は常にトランシーバーを携帯しコミュニケーションを取っています。

 

機関室内は先ほども説明した通り、とてもうるさく、耳栓もつけているため少し離れた距離でも中々声が届かないときもあります。

また航海士の場合も、船がとても大きく(300~400m)、声が届かない距離で作業を行うことが多々あるため、トランシーバーは必須の装備となります。

 

外国人クルーともトランシーバーを介してやり取りを行います。

英語でコミュニケーションを取るため通常の会話時も英会話能力が必要となりますが、

トランシーバーを利用すると音が途切れ途切れになってしまったり、雑音が入ってしまうことも多く、さらに聞き取りの難易度が上がります。

 

初めて船に乗って働きだしたときには、「周りはうるさいし、トランシーバーは雑音で何も理解できない」と仕事をやっていけるか不安になりました。

しかし人間というのは不思議なもので、しばらくその生活を続けていると雑音がだんだんと聞き取れるようになってきました。

そして、長期休暇を終えて船に戻ってくるとまた何も聞こえない状態から始まります。

 

過酷な状況でも時間が経つと慣れてしまうのだなということを実感しました。

これからも船という特殊な環境を楽しみつつ頑張っていこうと思います。

 

 

 

以上が外航船の労働環境についての説明でした。

ここまで読んでいただきありがとうございました!