外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

21世紀の次世代帆船⁉ 商船三井の『ウインドチャレンジャープロジェクト』とは

現代の外航船はエンジンやタービンを使用して航行しています。

それに対し、商船三井は地球環境保護の一環として風力推進船の実用化に取り組んでいるようです。

 

今回は、「ウインドチャレンジャープロジェクト」について説明していきたいと思います。

 

 

ウインドチャレンジャープロジェクトとは

ウインドチャレンジャープロジェクト

(引用:ウインドチャレンジャー|商船三井(MOL)サービスサイト

 

ウインドチャレンジャープロジェクトは、商船三井が2022年に実用化を目指している硬翼帆式風力推進装置(ウインドチャレンジャー)を搭載した石炭輸送船の開発プロジェクトのことです。

第1船は石炭輸送船で実用化を目指していますが、他の船種でも使用できるようです。

 

ウインドチャレンジャープロジェクトのプロモーションビデオも先日公開されたので、ご覧ください。

従来は化石燃料を使用したエンジンやタービンが船舶の推進機関として利用されてきましたが、ウインドチャレンジャーを搭載することで化石燃料の消費を減らして温室効果ガスの排出量を削減できるとのことです。

 

伸縮式硬翼帆とは

伸縮式硬翼帆は、文字通り遠隔で伸縮可能な硬翼帆のことです。

材質にはGFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic:ガラス製繊維強化プラスチック)が使用されています。

 

従来の帆船に使用されていた帆の場合には、風の状況に応じて帆の張りや向きを調整する必要がありました、伸縮式硬翼帆では帆の伸縮や回転などが自動制御で行われます。

 

1/2.5に伸縮されたモデルにはなってしまいますが、実際の伸縮式硬翼帆の陸上試験動画も存在します。

 

ウインドチャレンジャーの課題

公式HPによると、ウインドチャレンジャー最大の課題は「硬翼帆を船首に搭載することによる、操船上および、荷役中の安全性の担保」です。

 

硬翼帆を搭載することでブリッジからの視認性が悪くなったり、荷役時にクレーンが接触する危険などが増大します。

これに関しては、寄港予定の港湾情報をもとに、操船シミュレーターを構築してシミュレーター上で何度も検証を繰り返したようです。

 

ウインドチャレンジャーのメンテナンス

機関士として気になる点は硬翼帆のメンテナンス性です。 

実際に硬翼帆を見たことはないので自分の経験を話すことはできませんが、公式HPではウインドチャレンジャーのメンテナンスに関して以下のように記載されています。

硬翼帆の根本部分にある機械部品(伸縮に使う油圧ポンプ、回転につかう旋回モーター)などは、他の一般機械と同じように運転時間に応じてメンテナンスが必要です。
帆の鉄部材は、塗装により保護しますが、経年で錆が出てきた場合はドックで再塗装を行う予定です。
また、FRP部については基本的にメンテフリーですが、紫外線により退色するので、美観維持の観点から一定の期間毎に再塗装をする必要があると考えています。 

(引用:ウインドチャレンジャー|商船三井(MOL)サービスサイト

 

これを読む限りは船上で行うメンテナンスは油圧機器に関するものだけであり、今までの船舶で行うメンテナンスと特に変わりはないという印象を受けます。

万が一ウインドチャレンジャーに不具合が発生した場合には緊急でドック(船の修理工場のようなもの)に入り、修理するという形になりそうです。

 

 

以上が次世代帆船ウインドチャレンジャーについての説明でした。

別記事で紹介したアンモニア燃料船も含めて、地球温暖化対策に向けて様々な会社が新しい船を開発しています。

新しい試みをするときには失敗もつきものなので、どのような未来になるかは分かりませんが今後も新しい船の開発に注目していきたいです。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!