船がプロペラを回すことで推進力を得て、舵を切ることで左右に方向転換しているということを知っている人は多いと思います。
しかし、実は一部の船は真横に移動する機能を搭載しています。
今回は、船の持つ隠し機能「サイドスラスター」について説明していきたいと思います。
船舶の移動方法
基本的に船はプロペラを回し水流を作り出すことで推進力を得て前後に移動します。
方向転換をしたい場合には、プロペラ後方にある舵の角度(舵角)を変化させて水流を曲げることで反力を得て船尾を左右に振ることができます。
そのため、低速で航行をしている場合や逆に後進している場合には舵に十分な水流を当てることができず、舵が利かなくなります。
そこで、低速で航行する必要のある港湾内のサポートや接岸離岸時の横移動を実現するためにタグボートを呼んで入出港作業を手助けしてもらっていることは別の記事で説明した通りです。
サイドスラスターとは何か
サイドスラスターの定義
しかし、実は一部の船はタグボートの力を借りなくても真横に移動する機能を持っています。
それがサイドスラスター(side thruster)です。
サイドスラスターは引用写真で示したように、船底付近に横穴(トンネル)が開けられていて、その内部にあるプロペラで左右方向の水流を生み出すという構造になっています。
サイドスラスターのプロペラは通常、可変ピッチプロペラ(CPP)と呼ばれる特殊なプロペラが使用されていて、プロペラは一定速度で一方向に回転しているのにも関わらず生み出す推進力の大きさや方向を自在に変化させることができます。
(詳しく説明すると長くなってしまうので、今回は割愛させていただきます。)
サイドスラスターの取付位置
サイドスタスターは船首側、船尾側のどちらにもつけることができ、船首側のものはバウスラスター(bow thruster)、船尾側のものはスタンスラスター(stern thruster)と呼ばれます。
サイドスラスターをつけている船の中にはバウスラスターとスタンスラスターの両方を装備しているものも存在しますが、バウスラスターのみを装備している船も多いです。
冒頭で船が方向転換をする際には「船尾を左右に振る」という説明をしました。
つまり、プロペラと舵のみでも船尾側をある程度左右に動かすことは可能です。
それに対し、船首側はプロペラと舵のみでは左右に振ることはできないため、船首側につけるバウスラスターの方がスタンスラスターよりも重要だからです。
また、サイドスラスターを設置している部分の真上(喫水線上)には次の写真で示したようにマーク(スラスターマークと呼ぶ)が描かれてることが分かります。
基本的にサイドスラスターを搭載している船もタグボートの力を借りて入出港作業を行うため、サイドスラスターの作動線上に船が入ると水流の影響で事故が発生する危険があります。
そこで、普段は水面下にあって場所が分からないサイドスラスターの位置を明示することで事故の発生を予防しています。
サイドスラスターの出力
現在、2500kW以上の出力をもつサイドスラスターが搭載されている大型船も存在します。
自動車の代表としてプリウスの最大出力が90kWなので、先ほどの写真で示した横穴の中に単純計算でプリウス約30台分のエンジンが置いてあることになります。
あくまでも入出港を補助するための装置がここまでの大出力を持っていることからも、船の世界のスケールの大きさが伝わると思います。
以上がサイドスラスターについての説明でした。
船によってサイドスラスターがついているもの、ついていないものが存在しますが、客船等はサイドスラスターがついている場合が多いので、今度船を見る機会があればスラスターマークを探してみてください!
ここまで読んでいただきありがとうございました!