外航海運船員の船乗り日記

外航船員が船上(ときどき陸上休暇)で送る波乱万丈(?)な日常生活です

外航船員は船酔いしないのか?:船乗りがオススメする船酔い対策

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初めて会った人に船乗りをやってますというとよく聞かれることが、

「長い間船に乗っていて船酔いはしないの?」という質問です。

 

今回は、この疑問について回答していきたいと思います。

 

 外航船員は船酔いしないのか

外航船員は半年以上船の上で過ごすことになるため、「船酔いしないのか?」と気になる人も多いと思います。

 

私の場合、基本的に船酔いはしません

(台風が近づいているときなど、海が非常に荒れているときは少し気持ち悪くなりますが…)

 

ここで「私の場合」と書いた理由は、結局船酔いするかどうかは人それぞれだからです。

つまり、外航船員の中には船酔いに対する耐性が弱い人もいます。

 

船種による船酔いのしやすさの違い

実は船の種類によって船酔いのしやすさは大きく異なります。

船酔いをしにくい方から順番に「大型客船>大型商船、客船>漁船、ボート」という順番です。

それぞれ簡単な説明を加えていきます。

 

客船(クルーズ船、フェリー)

客船は船の中でも船酔いのしにくいものだと言えます。

というのも客船には「フィンスタビライザー」という船の揺れを少なくするための装置がついているものが多いからです。

フィンスタビライザー

(引用:三菱重工マリンマシナリ株式会社

 

この装置で水面下の船側部分からフィン(翼)を出し入れすることができ、

フィンに当たった水流が生み出す揚力で船の横揺れを小さくすることができます。

船の横揺れに関してはフィンスタビライザーの効果で軽減することができますが、縦揺れは小さくすることができません。

 

フィンスタビライザーは揺れを小さくするという利点を持っていますが、同時に抵抗を生み出してしまうため燃費が悪化するという欠点も持っています。

そのため、商船などで用いられることはありません。

 

大型商船

外航船員が乗るような大型商船の場合、大きなものでは長さが400m、幅が60mという非常に大きなものになります。

このような大きな船の場合、船の揺れの周期は長くなり、そんなに揺れを感じることはありません。  

 

漁船、ボート

 先ほどの大型船の話とは逆で、漁船や小型船などは揺れの周期が短く、最も船酔いのしやすい船だと言えます。

また、船は停止しているときや減速して航行しているときの方が波による揺れの影響を受けやすく、漁場で停止する機会などの多い漁船は余計に船酔いがしやすい条件となります。

 

船酔いは乗ってるうちに慣れるのか? 

ところで「船酔いはそのうち慣れる」ものなのでしょうか?

 

私は元々あまり船酔いをしない体質だったので周りの人から聞いた話にはなってしまいますが、残念ながら船酔いには慣れないという意見の方が多いです。

 

どれだけ船に乗っていても揺れに弱い人は気持ち悪くなってしまいます。

ただし、船酔いで気持ち悪くなったときに嘔吐せずに我慢できるようにはなります。

「我慢できる」という意味で慣れると言っているのなら正しいかもしれませんが、気持ち悪くならないという意味ではありません。

 

船乗りのオススメする船酔い対策

では、「船酔いをしやすい人は船員になることはできないのか」「船旅を楽しむことはできないのか」と言われると決してそういう訳ではありません。

何の対策もなしに慣れで船酔いを克服することはできませんが、事前に準備をすることで船酔いを軽減することはできるからです。

 

酔い止め薬

結論から入ります。

この後も船酔い対策をいくつか紹介していきますが、最も効果的なものは酔い止め薬です!

 

様々な酔い止め薬が存在しますが、私が一番オススメするのはアネロンです。

外航船の中には病室があり、非常時に備えて薬などが常備してあります。

酔い止め薬も置いてあり、私が乗ってきた船ではアネロンが採用されているケースが一番多かったです。

アネロンの公式HPを見ると、現在アネロンは乗り物全般の酔い止めとして有名ですが、もともとは船酔い対策の薬として開発改良されてきたことも分かります。

 

一点だけ注意事項があります。

酔い止め薬は必ず船酔いが発生する前に服用してください!

アネロンの取扱説明には「船酔いが発生してからでも、すぐに服用すれば症状を緩和できる」と記載されていますが、予め服用しておいた方が効果は大きいです。

 

十分な睡眠

船酔い対策としては体調を整えること、睡眠をしっかりとることが重要です。

船員として働いている場合には入出港が重なり十分な睡眠がとれないときもありますが、寝る前に携帯を触らない、お酒を飲みすぎない等、睡眠の質を上げることでカバーすることができます。

 

適度な間食

人間は空腹状態、あるいは逆に満腹状態だと船酔いになりやすくなってしまいます。

一度に食べすぎるのではなく、適度に間食を挟むことで船酔いを防止することができます。

間食として食べるものはキャンディ、ガム、チョコレートがオススメです!

血糖値をあげ脳を覚醒させることで酔い止め効果があると言われています。

 

水平線を眺める

船酔いになってしまった場合にはデッキ上に出て風を浴びながら水平線を眺めると良いです。

船酔いは「視覚情報」と「三半規管が感じる揺れ」が異なり、脳が混乱してしまうことで発生します。

遠くの景色を眺めることで「船が揺れている」という正しい視覚情報を認識することができ、船酔いが治まります。

 

揺れているという現実を受け入れる

船酔いに弱い人の中には、「揺れてない…揺れてない…」と頭の中で考えて現実逃避しようとしている人がいます。

しかし、先ほども説明した通り、船酔いは身体(三半規管)が感じる揺れと脳に送られてくる情報が異なることで発生します。

つまり、この情報のズレをなくすためには、「あー船が揺れてるなぁ」ぐらいの気持ちで現実を受け入れた方がいいのです。

実際に私も普段仕事しているときには、「今日は結構揺れるなぁ」等と考えながら仕事をしています。

 

 

以上が船種毎の揺れ方の違いや船酔い対策についての説明でした。

船酔いが心配で船に乗りたくないという人もいるかと思いますが、実は自分の気持ち一つで船酔いのなりやすさは大きく変化します。

この記事を読んだ人は私に騙されたと思って「私は船酔いにかからない」ぐらいの気持ちで船に乗ってもらった方がいいかもしれません笑

 

ここまで読んでいただきありがとうございました!